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希望を抱き続けて
希望を抱き続けて
三条総合病院 院長 上村 旭

 平成16年10月23日午後6時前、燕三条駅近くの県央リサーチコア七階において、県央腎透析懇話会開催中に激しい地震に見舞われました。会は中止となり、病院に駆けつけると、幸いにも入院患者の被害や混乱は無く、建物の損壊も無いようでした。エレベーターが止まったこと以外にライフラインの異常なく、駆けつけた各部署の職員で、透析施設を始め病院機能に差し障りが無いことを確認いたしました。24日朝、川口、小千谷、十日町、長岡、栃尾方面の被害状況、各現地の病院の被害状況、交通状況などの情報が集まった時点で、当院は現地からの患者受け入れを主とする後方部隊としての役回りが重要な任務であると考え、患者受け入れ態勢の準備をし、さらに魚沼病院への救援隊の派遣を行った。

 長岡中央綜合病院の透析患者30名ほどが25日に当院で透析することになったので急遽、当院の25日の透析予定患者に連絡を取り、34名を24日のうちに(幸い日曜日であった)透析治療してしまい、翌日の受け入れに対応しました。
 長岡中央綜合病院からの透析患者は25日に32名、26日に34名を当院で治療、残りのほぼ同数の患者は刈羽郡総合病院で治療していただきました。長岡中央綜合病院の復旧が早く、2日間のカバーのみで済んだのは幸運でした。また転入院に関しては、栃尾郷病院から17人、小千谷総合病院から5人、魚沼病院から4人、長岡中央綜合病院から3人、長岡赤十字病院から2人で合計31人となりました。

 今回の地震に際して、被災地の病院からの患者の転入院や、慢性透析患者の治療維持などについては、厚生連という系統病院としてのネットワークは大変有利に作用し、比較的迅速な対応が出来たのではないかと思います。しかし、今回も初動活動が遅れ気味であったこと、情報収集にばらつきがあったこと、救援活動が適切に行えたか少し疑問も有るなど問題も多く、災害時は内容にも因るが、厚生連本部と組合本部が、災害情報収集と指示系列を一本化した災害対策本部を即座に立ち上げて対応すべきであると思います。

 使える災害時マニュアルの整備、確実な情報収集、伝達方法の整備(今回は無線がかなり有効であったとのこと)、広報の充実(今回の厚生連病院間の連携についてはあまり外部で知られていない)、行政を含む現地の医療救護対策本部などには公的医療機関として積極的に参加する、などの対応が大切であり、今回の地震を教訓に早急に整備が必要です。
希望を抱き続けて
三条総合病院(看護師) 坂井和子

 県央腎透析懇話会の、コーヒータイムが終わり特別講演が始ろうとした時七階で大きな揺れを感じた。余震が続き、特別講演は延期となった。その間、家族の安否が心配だと口にするが、誰一人中止の声がかかるまで、会場を去る人がいなかったのは驚きである。その足で、透析室の被害状況を確認しようと、病院に駆けつけると、先に臨床工学技士達が確認していて、うれしかった。

テレビには、地震のすごさが映し出された。幸い、水害時に、他院で透析をお願いする事はなかったが、他施設の温かい言葉に感謝した覚えがある。

水害時のお返しの気持ち
 今回は私たちがお返しする番だと思った。24日、自主的に、臨床工学技士1名、看護師1名が駆けつけた。中越地区透析施設の被害状況が解からず、被害地の透析を受け入れるとしたら、g透析は日曜は行っていないi。今日透析を行えば、明日被害地の患者を受け入れられると判断した。水害時に作成した連絡表を基に、全患者の安否確認を、二日後の透析患者から行うように指示した。その間に、透析医師に相談し日曜透析を決行した。

 透析方法を、医師、臨床工学技士を含めカンファレンスした。明日、受け入れたとしたら、物品は?スタッフは?など問題はあるが、やるしかないと思った。スタッフは、水害を経験した後だけに患者もスタッフも、「お互い様だから」、「私たちでできることはやる。」と気持ちを一つにして、月曜日の透析患者32名の透析を行った。日曜日に出来なかった患者には、一時間早く透析開始に協力してもらい、大勢の患者を受け入れても良いようにした。

思いやりからの出発
 その後も、一週間は、災害対策として、30分早出勤務とした。災害時には、患者の安否確認、透析が行えるか行えないとしたらどう対処するかである。水害時には、いろいろ経験をさせてもらった。透析困難となった場合を想定して、一日で120名以上のサマリーを持たせた経験がある。電話をかけまくると、耳が痛くなり口の廻りもおかしくなる経験もした。

 ある患者の家族が炊き出しに行き、認知症患者一人を迎えにこれなくなり手を引いて巡回することになった時、徘徊する老人に水害を納得させる事は出来ない。まさかこの老人を一人にして事故が起きたら、どうして良いかと途方に暮れた覚えがある。こんな時、血縁関係も希薄になってきた現代を考えると、災害地域のネットワークが普段から検討が必要ではと思った。

 スタッフを信頼し、お互いに協力し合う事、すべてが思いやりから行えることである。一人で出来なくとも、みんなの力があれば乗り切れる。透析室スタッフのみんなありがとう!
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