子宮がんには子宮の入り口の部分(子宮頸部)にできる子宮頸がんと子宮の奥(子宮体部)にできる子宮体がんの二種類があります。今回は、予防ワクチンの導入でクローズアップされた子宮頸がんのお話です。 |
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子宮頸がんは女性特有のがんとしては乳がんに次いで罹患率が高く、20〜30代では第一位となっています。日本では毎年約1万人もの女性が新たに子宮頸がんにかかり約3500人が子宮頸がんで命を落としています。
体を蝕むがんにはさまざまな種類がありますが、 その多くは原因がわかっていません。これに対して子宮頸がんはその原因の多くがヒトパピローマウイルス(HPV)である事がわかっています。
では、子宮頸がんから身を守るにはどうしたらよいのでしょうか。それは予防と早期発見、早期治療です。子宮頸がんの予防のためにはワクチンがあります。最近テレビなどで耳にする事が多くなった「子宮頸がんの予防ワクチン」とはこのHPVの感染をブロックする事によって子宮頸がんを予防しようというものです。HPVは性交渉によって感染するウイルスです。ですので、HPVに感染する前、すなわち性交渉前の女児に接種することが勧められているのです。このワクチンはHPVの百種類以上の「型」のうち、子宮頸がんから多くみつかる、ある特定の型の感染を防ぐものであり、ワクチンの接種を受ける事で高い予防効果が得られます。
しかし、既に感染してしまったウイルスを排除したり治療したりする効果はありません。またこのワクチンは子宮体がんの予防効果はありません。「ワクチンを受けたから頸がん検診はしなくていいか? 絶対に子宮頸がんにならないのか?」と問われれば、答えは「ノー」です。
広くワクチンを理解、接種していただくために一部の年齢の方には公費助成があります。その効果もあってワクチンの接種者は増加傾向にあります。しかし、その一方ではワクチンをしたという安心感から子宮頸がん検診の受診率が低下するのではないかと言う心配の声もあがっています。 |
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子宮頸がんから身を守るもう一つの方法は早期発見、つまり子宮がん検診を定期的に受けていただく事です。検診は恥ずかしい、痛いかもしれないなどの理由で敬遠されがちで、日本は受診率がとても低い状況です。
子宮頸がんは病気がある程度進行すると性交渉の時に出血するなどの症状が出ますが、初期は無症状です。症状がなくても検診を受けて頂くことで子宮頸がんの早期発見率は上がり、死亡率の低下につながっていくのです。仮に子宮頸がんが発症してしまったとしても、早期発見できれば子宮頸部だけを切り取る方法(円すい切除)によって子宮全体をとらずに済む場合が多くあります。この場合、子宮全体を切除するのではないので、妊娠、分娩も可能です。 |
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ご自分が受けた検診は頸がんなのか体がんなのか、ワクチンの注意点などよく説明書をお読みください。子宮頸がんは特別な人の病気ではありません。HPV感染は多くの女性が一生のうちに一度は感染する可能性があると言われるほど、ごくありふれたウイルス感染です。「特別な人」に感染するというような誤解は患者さんを苦しめます。子宮頸がんについて正しい理解をし、子宮頸がんから身を守りましょう!
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