肝疾患の原因には肝炎ウイルス、代謝栄養障害、過度の飲酒、自己免疫、先天異常などがありますが、わが国における慢性肝疾患の原因として最も重要なのは肝炎ウイルスです。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eの五種類が知られていますが、このうち慢性化するものはB型とC型で、いずれも慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんの原因となります。
B型肝炎ウイルス(HBV)はDNAウイルスで、輸血用血液のスクリーニングが開始される一九七二年以前には輸血後肝炎の原因としても重要でした。しかし、それ以後は主として母児間感染により母から子へと垂直感染し、出生時からHBVキャリアとして存在し、うち約八割の方はそのまま何事もなく一生を終えますが、残りの約2割の方が慢性肝炎を発症し、肝硬変、肝細胞がんへと進展するリスクを持ちます。
HBVキャリアはかつてわが国人口の約1〜2%を占めていましたが、1981年より国による母児間感染防止事業が始まり、垂直感染を防止することでHBVキャリアは激減し、現在大学生以下のキャリアはほとんどみられなくなりました。その代わり、風俗などの性的接触による水平感染が増加し、中でも外来型である遺伝子型A型のHBVは慢性化しやすいことから注意が必要です。 |
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B型慢性肝炎の治療にはインターフェロン(IFN)や様々な肝庇護薬が用いられてきましたが、なかなか有効な治療法はないのが悩みの種でした。2000年より内服薬でHBVの増殖を抑制する核酸アナログ製剤が臨床的に使用可能となってからB型慢性肝炎の治療は一変し、現在では35歳以上の患者さんには核酸アナログ製剤が第一選択とされています。現在使用可能な核酸アナログ製剤には発売順にラミブジン(商品名ゼフィックス)、アデフォビルピボキシル(ヘプセラ)、エンテカビル(バラクルード)の三つがあります。
このうちラミブジンは最も早く使用されましたが、薬剤抵抗性の変異株が出現する頻度が高く、現在ではラミブジンによる変異株の増殖を抑える目的でアデフォビルピボキシルをラミブジンに併用投与することが可能となり、2008年からはアデフォビルピボキシルの単独使用も保険認可されました。
最も新しい核酸アナログ製剤にエンテカビルがあり、エンテカビルは他の二剤に比べて耐性変異を起こしにくいことから、厚生労働省の研究班のガイドラインでは第一選択となっています。
核酸アナログ製剤の副作用として催奇形性があり、そのためガイドラインでは35歳以下のB型慢性肝炎にはインターフェロンが推奨されています。
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2011年にはそれまでC型肝炎に使われてきたペグ化インターフェロン製剤であるペガシスが、B型慢性肝炎に対しても保険適応となりました。
従って今後は核酸アナログ製剤や従来型のインターフェロン、ペグ化インターフェロン、あるいは強力ネオミノファーゲンCなどの他の肝庇護薬などを病態に応じて使用することによりB型肝炎の肝硬変、肝細胞がんへの進展阻止に当たることが最も重要です。
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