寒い季節になってきました。寒い朝にゴミ出しに行き、凍った路面で滑って転んだ。明け方トイレに行こうとして転倒、尻もちをついた。冬になると、そんな高齢の患者さんが少し増えます。
若い人は、ただ転んだくらいではめったに骨折しません。一方、骨がもろくなったお年寄りは、立っている高さから「転ぶ」だけで簡単に骨折してしまいます。若い人に比べて骨がもろく折れやすくなっているのです。
骨折にはいろいろな種類がありますが、今回は大腿骨近位部骨折(脚の付け根の骨折)に的を絞って書いてみます。 |
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日本整形外科学会の全国調査によると、十二月から二月にかけて、この骨折が増えています。この調査では「冬に多いのは、着膨れて転びやすいことや、血中のビタミンDやKが低下し、骨や筋力が弱くなることが原因」とされていますが、加えて新潟県では雪や凍結が原因で、玄関先で転んだりするケースも多いと思います。
この骨折は転んで股関節のあたりや太ももの付け根が痛くて動けない、歩けない。そんな状態で搬送されて来ます。ほとんどの場合、入院して手術をすることになります。
手術の方法は、折れ方によって、金属で骨をつないだり(骨接合術)、折れた部分を切り取って人工のものを入れたり(人工骨頭挿入術)します。早ければ(これも折れ方によりますが)手術翌日からリハビリ、歩行訓練を始めることができます。
全身の状態が悪く手術ができないと寝たきりになってしまうことが多く、褥瘡(床ずれ)、肺炎、認知症などの余病も起こしやすくなるため、なるべく手術をするのですが、手術をしても一般的に骨折後の最終的な歩行能力は1ランク落ちるといわれています。骨折をきっかけに筋力が落ちたり、気力がなくなったりするためです。お年寄りが寝たきりになる原因は、脳卒中、認知症、高齢による衰弱などさまざまありますが、骨折・転倒は寝たきりになる原因の約二〇%を占めています。
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健康寿命という言葉があります。日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のことです。高齢化社会を「健康なまま」長生きすることが重要だという考えから生まれた言葉です。平均寿命も健康寿命も日本が世界一で、今後も高齢化社会は進みますが、長寿社会をヨボヨボの社会にしないためには、健康寿命を伸ばしたいものです。元気なまま年を取るために、寝たきりになる原因、骨折の予防は大事です。
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骨折の予防=骨粗しょう症の予防です。骨粗しょう症予防の三原則は、食事と運動、日光浴です。カルシウム、ビタミンK、ビタミンDを摂りましょう。冬は屋内にこもりがちになりますが、適度な運動や日光浴を心がけましょう。
そして、これからの季節、転ばないために。滑りにくい靴を選んで履くようにしましょう。歩幅を小さめに、そしてゆっくり歩きましょう。歩きが不自由なお年寄りは杖やシルバーカーを使いましょう。身体が冷えているときは急な動きをしないようにしましょう。十分過ぎるほど気をつけて、冬をお過ごしください。
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