お口の中にできる口腔(こうくう)がん。日本では年間約六千人に発症するとされています。体の他の部分にできるがんと同じく、早期発見がその予後を左右します。あごの骨の中にも発症することはありますが、口腔がんの多くは舌や歯ぐき、頬(ほお)の内側などの粘膜の部分に発症します。そしてこの口腔がんは決して急にがんとして発症するわけではなく、いわゆる「前癌病変」と呼ばれるがんになる前段階が存在することが多いとされています。その段階で発見、治療することが重要です。
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前癌病変にはいくつか種類がありますが、その代表的なものに白板症(はくばんしょう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)と呼ばれるものがあります。本来きれいなピンク色を呈している歯ぐきや舌、頬の内側の粘膜などに汚れではない白く変化した部分が存在しているとすれば、それは白板症や扁平苔癬など前癌病変である可能性が少なからずあると思われます。また白い変化だけではなく、なかなか良くならない口内炎であったり、赤くただれたような変化であったりする場合もあります。
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この前癌病変と呼ばれるものには痛みや腫れなどの自覚症状がほとんどないことも多く、この段階で患者さんは歯科医院などに受診することはあまりありません。もちろん口の中が白くなったり、なかなか治らない口内炎があるのがすべて前癌病変ではありません。口の中が白く変化する場合、カンジダというカビの一種が原因であったり、歯の尖っている部分や入れ歯などによる単純な傷の場合もあるでしょう。そのため前癌病変であるか、患者さん自身での判断は困難と思われます。前癌病変のすべてががんになる、というわけではありませんが、かかりつけ歯科医院がある患者さんは定期的な検診を受けることで異常な変化については比較的容易に発見できると思います。
また、この前癌病変や口腔がんの原因はたばこや飲酒など刺激物を好んで摂取する嗜好を有する方であったり、前述の歯や菌による慢性的な刺激が持続して存在することが原因として発症すると考えられています。このような要因を早めに除去してもらうことも予防の方法の一つと考えます。
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口腔がんについては早期の治療を受けることで五年後の生存率は90〜95%と言われています。治療は主に手術、化学療法(薬による治療)、放射線治療とこの三つを組み合わせて、もしくはいずれかのものだけを選択して治療を行いますが、根本的に治療を行うことで少なからずお口のもつ機能に影響がでることが予想されます。
それは噛むことであったり、飲み込みであったり、おしゃべりであったりと多岐に渡ります。これらに影響がでるということは、すなわち生活の質が低下することにつながるので、前述のように早期発見につなげるためには定期的な歯科医院の受診やお口の中の検診をお勧めします。
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