脚の深部静脈に血栓
 深部静脈血栓症は中越地震の時に悪名を馳せた、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)のもとになる病気です。

 脚の静脈には、表在静脈と深部静脈があります(図1)。静脈には弁があり血液は下から上へ、表在静脈から深部静脈へと流れています。この深部静脈に血栓(血のかたまり)ができるのが深部静脈血栓症です。

 症状は脚の腫れ・痛み・発赤などです。ただし血栓ができても、症状の無いことの方が多いです。一番多い原因は、長時間の坐位、長期臥床、外科手術などによる血流のうっ滞です。

合併症のエコノミ-クラス症候群
 合併症で一番怖いのが、肺塞栓症いわゆるエコノミークラス症候群です。これは深部静脈にできた血栓がはがれ、静脈血流にのって肺動脈に達してつまることです。大きな血栓がつまると塞栓状態で死亡することがあります。深部静脈血栓症が自然に経過すると、多くは後遺症として深部静脈弁不全を残します。血栓とその後の変化により、深部静脈の弁機能が破壊され、血液還流が障害されるため夕方になると脚が腫れる、重く痛む、夜間に脚がつるなどの症状が現れます。

 
治療と予防
 治療は急性期症状の改善、肺塞栓の予防、後遺症や再発の予防が中心になります。まず抗凝固剤でこれ以上血栓が大きくならないようにします。また発症後早期の場合には、血栓溶解剤を使い血栓を溶かします。さらに合併症に対する予防処置を行います。
 深部静脈血栓症は一度発症してしまうと、もとの状態に戻すことは困難です。予防が大切になります。

 旅行などで、長期間狭い座席についていなければならない場合には、水分補給と脚の運動を心がけてください。脚を動かすと筋肉のポンプ作用によって静脈の血液が流れやすくなります。流れている血液は固まりません。

 深部静脈血栓症らしき症状が出現した場合には、早めに(三日以上たった血栓は溶かせません)病院を受診してください。