(前号からの続き)
出身はどちらですか?
 現在までのところASD(急性ストレス障害)・PTSD(外傷後ストレス障害)を完全に予防する方法は確立されていません。ASD・PTSDへの基本的な対応としては自然寛解の促進と尊重が挙げられます。そのためには被災者に対する心身両面での安心感を持ってもらうために、安心できる環境の整備が必要となります。環境の整備にはもちろん衣食住などの生活環境の改善もありますが、被災者が安心して自身の体験を受容し乗り越え、自然寛解を得るためのサポート体制の構築も含まれます。

 被災者が自らの体験を振り返り語る事は自然寛解のためには重要な事の一つになります。そのためには、支援者は被災者が安心して安心して自身の体験を語れる場を作り、その体験を聴き、それをありのままに受け入れ共感的に受け止める様な傾聴が必要となります。
 この際に支援者は体験を無理に聞き出したり、話す事を強要したりは決してせず、被災者が自身のペースで語りたい内容を語りたいように語ってもらう事が重要となります。被災者が語れない場合でも、被災者に寄り添い、「気にかけている」という支援者の態度を表す事が必要です。また、被災者自身の精神状態が必ずしも異常な状態ではなく、ある面においては正常な状態であることなどをきちんと説明する事も不安を軽減させ、安心して過ごしてもらうためには必要になります。

出身はどちらですか?
 ASD・PTSDの精神症状に対しては薬物療法、精神療法が行われます。

 薬物療法については治療法が十分に確立されてはいませんが、ある種類の抗うつ薬が再体験症状や回避・知覚麻痺症状、覚醒亢進症状を緩和が期待できます。その他にも症状に併せて抗不安薬や睡眠薬、抗精神病薬などが使用される場合もあります。

 精神療法についても認知行動療法や長時間暴露療法など種々の手法について有効とされますが、十分な専門的な知識と訓練を積んだ専門家が行う事が必要であり、一度だけの関わりではむしろ症状を悪化させる場合もあるため定期的な関わりが必要となります。

 繰り返しになりますが、ASD・PTSDへの基本的な対応としては自然寛解の促進と尊重になります。被災者が自分自身のペースで外傷を受容し乗り越えていく必要があります。薬物治療や精神療法は医師などの十分な知識と訓練や経験を積んだ者が行う事で初めて効果が得らます。しかし、被災者のそばに寄り添い、被災者の言葉に心から耳を傾けて話を聞く―傾聴することは誰にでもできる事であり、この事はPTSR(外傷後ストレス反応)のASD・PTSDへの進展やASD・PTSDからの回復にとても大きな効果を挙げるものになります。

 最後に改めて、直接的、間接的を問わずすべての被災に遭われた方、そしてそれを支援するすべての方が一日も早く、元の日常の生活に戻れますように心より祈念いたします。