まずは今回の大地震で被災されたすべて方に哀悼の意を示させていただきます。また、この地震に対するボランティアとして被災地に向かわれる皆様の高い志に敬意を表したいと思います。
災害は大きく分けて今回の地震のような自然災害と、火事や事故などの人為災害に分けられますが、どちらにおいても災害は人々に深刻な心理・社会的なダメージをもたらします。
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心理社会的には災害は「個人への精神的打撃=個人的な心的外傷と、社会生活組織への打撃=集団的な心的外傷をもたらす出来事」と定義されます。この心的外傷とは外界の圧倒的な事態に曝される事で自我が著しく脅かされ、安心感や安全感が保てなくなる事を意味します。心的外傷はその体験の直後から深刻な心理的な影響をもたらされ、一般的には様々な心身の変調をきたし、今までと同じような生活を送る事が困難となります。
このような心身の変調を外傷後ストレス反応(PTSR)と言い、これは外傷的な出来事に対する正常なストレス反応になります。 |
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このPTSRは@衝撃期(体験後、数時間〜数日間)、A反動期(体験後3〜5カ月間)、B回復期の三段階を経ます。 まず、@の衝撃期では心的外傷により極度の緊張と恐怖にかられ、ぼう然自失の状態となります。
その後A反動期となると、@で見られたぼう然自失とした状態から回復をするものの、外傷後ストレス反応による不安感や抑うつ感、思考力の低下などの情緒、思考面の変化や動悸、発汗、息苦しさなどの自律神経系の症状などの身体面での変化。さらに不眠や食欲不振、過食、飲酒や喫煙量が増える等の行動面での変化などの心身の変調が目立ち、それが持続したりするようになります。 Bの回復期になるとPTSRは時間の経過とともに徐々に消失し、心的外傷を受けた各人がそれぞれで心的外傷を受容し、その体験を乗り越えていきます。 |
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このようにPTSRは心的外傷にあった全ての人が多かれ少なかれ経験する正常な反応です。しかし、PTSRが時間経過しても軽減せず特定の症状が持続し、その後の社会生活に大きな影響を与える場合が有り、このような状態を急性ストレス障害(ASD)や外傷後ストレス障害(PTSD)と言います。
ASDは外傷体験後に顕著な症状や障害が2日間〜4週間持続する場合であり、症状としては@外傷体験を思い出したり、悪夢を見たり、フラッシュバックとして出来事の記憶や感覚が思い出される再体験症状、A外傷体験を思い出させるような場面や状況を避けたり、感情が麻痺したように活動性が減退するなどの回避・知覚麻痺症状、B不眠や、怒りっぽくなったり、イライラしたり、些細な事で過剰にびっくりするなどの覚醒亢進症状の三症状があります。
PTSDはこのようなASDで見られた症状が1カ月以上持続したものを言います。災害に被災したのちすぐにPTSDとなる事はありませんし、被災した全ての人がPTSDとなるわけではありません。まずは正常な反応であるPTSRを呈し、大部分の方が自然回復していきます。
PTSRからASD・PTSDへ変化するしないについては個人差が大きく、外傷的な出来事の強さや受け止め方、周囲のサポート体制、ストレスフルな生活上の変化等が影響すると言われています。(次号へ続く)
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