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これは従来、躁うつ病と言われてきた疾患で躁状態とうつ状態を呈します。病因として遺伝要因の関与や脳内での神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの増加が考えられています。生涯罹患率は1%で男女間の性差はなく、三十歳以前の若年で発症します。米国の診断基準では、躁状態とうつ状態を呈し、入院加療が必要になる双極T型障害と軽躁状態とうつ状態を呈す双極U型障害に分類されます。双極性障害は、似た症状を示すことから、統合失調症、うつ病、パーソナリティー障害などと診断されることがあり、確定診断が困難です。 |
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うつ状態の時は、すぐれず、晴れない気分や落ち込んだ気持ち、興味や関心が低下する、何もすることが嫌になり、食欲や体重が低下します。焦りや落ち着きのなさや疲れ易さも認め、夜眠れなくなります。家族や職場の同僚に迷惑をかけている思いや、すべては自分が悪いと考え、死んだほうがいいと考えることもあります。「自分は重大な罪を犯した」など被害妄想も認めます。治療しないと六カ月以上続くことがあります。
躁状態は、気分が高揚し、自分が偉くなった感じで、次から次へと考えが浮かび延々と話し続けるものの内容が不明瞭、朝早くから活動してじっとしていられない、高額の買い物やギャンブルに走ったりする、さ細なことで興奮することも多くあります。また、「自分は大臣だ」などと誇大妄想も認めます。発症が急で2〜3カ月以内におさまります。
これらの二つの状態が一定期間のうちに現れます。生活上のストレスのかかる出来事を契機に発症し、この状態を繰り返すことで、社会的レベルの低下をきたすことがあります。 |
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治療は休養と内服治療です。自殺の危険が強いときや興奮が著しいときは入院の適応になります。内服は気分安定剤、興奮や攻撃性などが強いときは、抗精神病薬を使用します。うつ状態のときは抗うつ薬を使用しますが、躁状態になることがありますので注意が必要です。気分安定剤は、血中濃度を定期的に測定する事で服薬の状況を把握できます。重症や難治例には電気けいれん療法が実施されることもあります。
治療期間は、家族歴がある場合や躁状態を二回以上繰り返す場合は、気分安定剤の長期または生涯にわたる予防療法が勧められます。 |
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睡眠欲求の減少や多動、思考がころころと変わる、気分が高揚する、イライラしたり怒ったりする、非現実的な計画、無謀な浪費などの症状に注意をはらうことで、躁状態の発症の予防になります。本人だけではなく、家族にもこの病気についての十分な説明が重要です。 |
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