喫煙は、がんや循環器疾患、呼吸器疾患などの多くの病気の原因であることはよく知られています。一方、タバコ煙の入口となる消化器としての口腔、特に歯肉を含めた歯周組織は、直接その影響を受けることになります。したがって、歯周病も同じように、喫煙と関連性が強いことは多くの研究により報告され、喫煙は糖尿病と並んで歯周病の二大危険因子となります。

 すなわち、一酸化炭素やニコチンなどによる免疫能、微小循環系、好中球機能、サイトカイン産生などへの影響により、歯周組織における宿主応答(抵抗性)や治癒に悪影響を及ぼします。  

 その結果、喫煙者では歯周炎が進行し、そればかりではなく、歯周病の治療への反応や歯周外科手術の経過が不良になることもはっきりしています。

出身はどちらですか?
 歯と歯肉のすき間(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かして歯をグラグラにさせてしまう病気を歯周病といいます。

 むし歯と異なり、痛みが出ないことが多く、気づかないうちに進行し、歯肉からの出血などが起こった後、歯が自然に抜け落ちるほど重症になることがあります。歯を失う80%以上の原因は、歯周病もしくはむし歯によるものです。

出身はどちらですか?
 一言で言ってしまうと「炎症症状が少ない」ということです。つまり、「歯肉の腫れが少ない」「ブラッシング時の出血が少ない」―などの特徴が現れます。

 歯周病は慢性に進行し、あまり強い症状が現れないことが多いのですが、その中でも「歯肉の腫れ」「ブラッシング時の出血」は比較的自分で気づきやすい症状です。しかし、喫煙者の歯周病ではこれらの症状が現れにくいということです。でも、これは決して歯周病が軽症だということではありません。

 生体には免疫という防御反応があり、病原菌が体内に侵入してきた場合、体内の対抗部隊との戦争が起きることになります。それが炎症という訳です。実際には歯肉が腫れたり、膿んだりします。しかし、喫煙により歯肉が低酸素状態になったり、免疫力が低下したりしていると、病原菌が侵入してきても対抗部隊の数が足りなかったり力が不足したりで戦争にならないことになります。つまり(非喫煙者に比べ)自覚症状が少なくても歯周病はどんどん進行し、歯周組織の破壊が進んでしまうのです。

 その結果、重度の歯周病に進行するというわけです。しかも炎症症状が現れにくいために、自分で歯周病の進行に気づきにくいということです。

出身はどちらですか?
 歯周病は基本的には歯周病菌による感染症ですが、様々な環境的素因や遺伝的素因が複雑に絡み合って進行していく病気と言えます。従って喫煙によって必ずしも重度の歯周病になるわけではありませんが、タバコは歯周病や全身の病気の危険因子であることに間違いはありません。また歯周病は全身の病気と密接な関わりを持っています。一生自分の歯でおいしく食べるためにも喫煙について今一度、考えてみてはいかがでしょうか。