夏は紫外線の多い季節で、ピークは八月といわれます。紫外線は太陽から放射される電磁波で、可視光線より波長が短く、地表に到達するのは、波長の長いものからUVAとUVBです。急性のいわゆる「日焼け」(日光皮膚炎)はUVBによるものです。
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紫外線は皮膚の細胞の遺伝子にも損傷を与えますが、皮膚細胞にはそれを修復する機構が備わっています。しかし、色素性乾皮症という病気の人は、先天的にこの修復機構に欠陥があり、強い日焼け反応やそれに続く色素沈着などを起こし、若いうちから露光部に高率に皮膚がんが発生します。
健常者においても、長期間にわたって紫外線を浴び、長年にわたり遺伝子を傷つけ過ぎると修復が追いつかなくなり、確率は低いものの突然変異が起き、皮膚にがん細胞が生じやすくなるといわれています。
主要な皮膚がんには、その悪性度の順に、悪性黒色腫、有棘細胞がん、基底細胞がんの3つがあります。「悪性度が高い」とは、「進行が速く、転移を生じやすく、従って死亡しやすい」という意味です。
基底細胞がんは、3つの中で最も発生頻度の高いもので、主に高齢者の顔にできる黒くて一見ホクロのような隆起です。他臓器への転移はまずなく、発生部位で徐々に拡大します。切除手術で多くは治すことができます。
それに対し、悪性黒色腫は、かなり早くからリンパ節、肺、骨、肝、脳などへ転移します。足底、爪下、体幹、四肢など色々な部位にでき、黒い局面や隆起で、しみ出すように拡大します。色素細胞のがん化によるもので進行例では有効な治療法がありません。
有棘細胞がんは高齢者の顔、頭などに多く、赤く湿潤性の隆起で、表面から出血しやすく、進行したものは、リンパ節、肺、骨、肝などに転移する可能性があります。直径2a未満なら十分離した切除手術で多くは完治が望め、放射線療法も比較的有効です。
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皮膚がんの発生要因と考えられているのは、もちろん、紫外線だけではありませんが、有棘細胞がんは、紫外線暴露の蓄積との因果関係がかなり強いと、広く認められています。その他の皮膚がんについても、紫外線が危険因子の一つであると思われています。
従って、夏は紫外線量が多い時間帯(10時から14時)にはできるだけ戸外に出ず、もし出るなら紫外線対策を行うべきでしょう。帽子や日傘、長袖の衣類(黒っぽい物の方が防止効果が高い)と日焼け止め(サンスクリーン剤)の使用などが考えられます。
サンスクリーン剤には、紫外線吸収剤と散乱剤がありますが、かぶれる人は、吸収剤無配合の製品を選ぶと良いでしょう。使用法は、例えば海水浴なら、SPF(UVB防止効果)30以上、PA(UVA防止効果)+++の製品を使い、二〜三時間ごとに塗り直す、などです
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今回述べた以外にも、紫外線には光老化(シミ、シワ、タルミ)の問題や、免疫力を低下させるとの説もあり、やはり当たり過ぎは禁物です。夏の日々を快適に過ごすため、また、将来に禍根を残さないため、注意を怠らないようにしたいものです。
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