私たちのからだにある脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪の二つに大別できます。皮下脂肪は、主に内臓を保護したり体温を保つのに役立ちます。内臓脂肪は、食事から得たエネルギー源を一時的に脂肪に合成し、貯えられたもので、必要に応じてさまざまな生命維持活動に使われています。

 しかし、内臓脂肪は過剰になると、血液中に中性脂肪として多く存在するようになり、動脈硬化を促進します。ただ、内臓脂肪は皮下脂肪に比べて、簡単にたまりやすい反面、減らすのも容易なことがわかっています。たまりやすさに個人差はありますが、日々の運動や食事によって、内臓にたまった脂肪を減らしたり、たまらないようにすることは可能です。
 動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞が発症しやすくなる状態を、「メタボリックシンドローム」といいますが、血中脂質異常、高血糖、高血圧などの症状のある人は食事を見直し、運動を心がけ、身近なところから生活習慣を改善して、病気の予防や管理をしましょう。改善ポイントは次の通りです。

肥満を指摘された方へ
 脂肪を控え、ビタミンや、ミネラルを多く含む緑黄色野菜や海藻などを増やすことが基本です。ただ、糖質とたんぱく質は、必要量をきちんととることが重要です。極端なダイエットは、避けましょう。毎日できるだけ3食同じ時間で食事すること、寝る二時間前までに夕食は済ませること、ゆっくり良く噛んで食べることが大事です。減量には、筋力トレーニングなどの「無酸素運動」より、速歩やジョギング、自転車などの「有酸素運動」が有効です。有酸素運動も20分以上続けないと効果が出ません。運動での消費カロリーは、一時間の速歩でも、150`カロリーで、ビール2杯、シュークリーム一個程度ですが、節食だけでは筋肉が減って、体脂肪だけが残りますので、運動の継続が必要です。

肥満を指摘された方へ
 血液中の中性脂肪や、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が、基準値より高い、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準値より低い状態のことをいいます。まずは、エネルギーをとりすぎないでバランス良く食事をとりましょう。

 肉類のおかずより、魚介類や大豆製品などの割合を多くする、コレステロールを多く含む食品に注意、油を使った料理は一日二品まで、野菜は毎食しっかりとる、アルコールや甘いものは控えめに、寝る前は特に控えましょう。

肥満を指摘された方へ
 糖尿病は、遺伝的要因の強い病気といわれていますが、生活習慣によって、大きく影響される病気でもあります。そのため、生活習慣の改善をすることが、血糖値の改善につながり、合併症の予防をすることになります。軽症の境界型糖尿病でも、動脈硬化などは進行するといわれていますので、早めに生活改善に取り組みましょう。一日に必要なエネルギー量を守り、食事療法の継続をすることが大切です。

肥満を指摘された方へ
 高血圧の9割は、原因が明らかでない本態性の高血圧です。しかし、遺伝的体質に食塩摂取過剰、肥満、アルコールの多飲、ストレスなどの生活環境因子が重なって起こるとみられています。

 緑黄色野菜、海藻、きのこ、果物、牛乳など、ミネラルを多く含む食品は、血圧を下げる効果がありますので、不足しないようにとりましょう。減塩のコツは、薄味でもおいしく食べられる新鮮な材料を使うことと、酸味・香辛料・香味野菜をうまく使うことです。味噌汁や漬け物には、1〜2c前後の食塩が、そしてインスタントラーメンには5c程度の食塩が入っています。塩分の摂りすぎには、十分気をつけて下さい。

 以上、食生活の改善点について述べてみましたが、毎日の生活の中で、体をこまめに動かす習慣も必要です。どこに行くにも車を利用する、歩いたり自転車に乗ることがない、運動が苦手でほとんどしない、仕事中は机に向かっている時間が長い、階段を使わずエレベーターやエスカレーターを利用する、などこれらは心がけひとつで、改善可能です。

 食事と運動の2本だてでより健康的な生活を送りましょう。
 村上総合病院 管理栄養士・小坂浩子