二人に一人はがんという病気にかかり、三人に一人はがんで死ぬといわれる時代にあって、がんという病気はけっして他人事ではありません。もちろんがんにかからなければそれに越したことはないのでしょうが、こればかりは自分の力でどうこうできるものではありません。もしがんという病気にかかったらどうするか…、あらかじめ考えておくのも悪くはないと思いますし、また、あなたが今現にがんと闘っておられるのであれば、この一文が今後の闘病の参考になれば幸いです。
|
|
がんと言ってもさまざまな種類がありますが、とりあえずここではひとまとめにして「がん」として扱います。
がんにかかったらどうするか…。まずは治すことを考えますよね。治療が奏効して治ればそれに越したことはありません。でも治らなかったら? そんなことは考えたくない? 確かにそうでしょうが、現在のがんの治癒率は40〜50%、どんなに頑張っても半分以上の方は治らないのです。
さて、それでは治らないときにはどうすればいいのか…。絶望感に浸ってうつうつと過ごす? そんな馬鹿な…。大事な人生を無駄にするような過ごし方はもったいない。がんという病気にかかったとしてもすぐに寿命が尽きるわけではありません。うまくコントロールできれば年単位で自分の人生を送ることが可能です。でもその際、痛みやその他のつらい症状に苦しむようでは自分なりの人生なんて送れません。
昔はがんというと耐え難い痛みにもがき苦しみ、悲惨な状態で亡くなっていくことが多く、それを見ている周りの人々が、がんにだけはなりたくないと言って、がんを忌み嫌ったものです。でもそれは昔の話、今では痛みなどの症状を和らげるための知識・技術(緩和ケアと言います)が進歩し、90%以上のがん患者さんの苦痛を緩和することができるようになっているのです。
|
|
これまでのがん医療は「がんという病気」にのみ目が向けられがちでしたが、最近は「がんという病気を持ったひとりの人」を診ることが求められています。がん対策基本法という法律が制定され、がん医療に携わる医師はがんの治療とともに緩和ケアの知識・技術を身につけなければならないとされています。たとえがんは治らなくとも、がんによる苦痛を緩和することは可能なのです。
|
|
もし、今あなたが、あるいはあなたの家族ががんにかかり闘病中で、痛みなどの諸症状で苦しんでおられるとしたら、是非率直に担当医に話をしてください。遠慮する必要はありません。担当医はその苦痛を和らげる義務があるのです。痛みをがまんしてもいいことはありません。ただ痛みは主観的なものなので、あなたが話をしないと担当医には伝わりません。
緩和ケアはがんが治らない場合にのみ適応となるわけではありません。治癒を目指して治療をしている場合も、抗がん剤の副作用など様々な苦痛を伴います。その苦痛を和らげるのも緩和ケアという技術であり、がんの治療の一部なのです。
どうか苦痛に耐えるのが美学などとは、おっしゃらないでください。
|
|
|