豚に由来する新型インフルエンザ、swine-origin influenza A(A/H1N1)(S−OIVと略す)がメキシコから出現しました。今年は香港かぜ以来の大流行になりそうです。大都市中心の流行だけでなく、地方へも流行が始まっています。(本文は10月14日現在の状況です)

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 20世紀の過去の新型インフルエンザは、スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜなどですが、国内ではすべて2回の流行を起こしました。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 過去のどの新型インフルエンザも出現して1〜2年以内に25〜50%、数年以内にはほぼすべての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきました。今回のS−OIVもやがては新たな季節性のA型インフルエンザとして、十年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれます。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 新型の流行初期ではインフルエンザの免疫が少ない若年層で被害が多くなり、数年で全年齢層がほぼ等しく免疫を保持するようになります。その後は相対的に抵抗力の弱い高齢者に被害の中心が移ります。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 S−OIVの潜伏期は3日ぐらいと短く、咳(せき)や咽頭痛は1―2日前後から出現する可能性があり、発熱は3日目くらいで、発症前から感染性を持つため封じ込めは困難です。

 発熱で来院する人は発熱があってもインフルエンザと診断されていません。医療機関に患者さんが集まることにより、感染していない人も居合わせた医療機関で感染しますし、地域社会の中で感染しますので、日頃から各自の注意や対応が必要です。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 新型インフルエンザには、内服薬である商品名タミフル(一般名オセルタミビル)や吸入薬である商品名リレンザ(一般名ザナミビル)が有効ですが、商品名シンメトレル(一般名アマンタジン)は無効です。積極的に治療を受けてください。季節性インフルエンザにおける異常行動は、インフルエンザ自体の中枢神経症状としての異常行動なのか、タミフル由来の異常行動なのかは判定できていません。リレンザは五歳以上であれば使用可能です。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 流行が懸念される時期には、できればあまり人ごみには出ないこと。外出時にはマスク着用、互いのせきエチケットの遵守、外出後のうがいと手洗いが必要です。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 現在の季節性インフルエンザの主な型はA/H1N1亜型(ソ連型)、A/H3N2亜型(香港型)とB型です。従来の季節性インフルエンザワクチンを先に打ってください。新型インフルエンザワクチンも確保される予定です。重症化を防ぐ目的で、新型を2回打ちで接種してください。ワクチンを打っても発症する人がいます。なお、インフルエンザワクチンは不活化ワクチンなのでインフルエンザを発症しません。副作用でギランバレー症候群などを発症することがあります。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 新型の多くは軽症で治癒していますが、死亡例も出ています。S−OIVで入院したのは細菌性肺炎や呼吸不全が原因ですが、様々な基礎疾患を持つ方が多いようです。なお、最新の研究では、重症例ではヒトメタニューモウイルスに重複感染をしています。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 細菌性肺炎は様々な菌で発症しますが、肺炎球菌による肺炎は重症化し易い肺炎です。 高齢者ではワクチン(商品名ニューモバックス)がありますので、接種を考慮してください。

過去の新型インフルエンザ流行の実態
 新型インフルエンザによる死亡率は各国の経済状態の反映、あるいは医療水準の反映といわれています。我が国の経済や公衆衛生と医療の向上は著しく、個人の栄養・感染防御能も著しく向上しています。インフルエンザの迅速診断と薬による治療では圧倒的に世界をリードしており、新型インフルエンザの被害を大幅に抑制できると思われます。かかったと思ったら積極的に検査と治療を受けてください。