息をするときに、普通のすーすーという音のほかに、ぜいぜい、とかヒューヒュー、とか聞こえることを喘鳴と呼びます。そばにいるだけで聞こえることもありますし、耳を胸や背中に当てないとわからないこともあります。

 感冒時の喘鳴は乳幼児の約二割、小児の約一割に時々見られる大変ポピュラーな症状ですが、その中に小児喘息が三〜五割混じっています。

 喘息は大変有名な病気で、治療法の進歩によって重症者は減っていますが、それでも全国では大人も含めて年間二千五百人の方が亡くなっている注意の必要な病気です。

ご出身は
 一般に、喘息は「急にぜいぜいする病気で、それを止めるのが治療」と思われがちですが、実は慢性の病気の一つで、治療には根気が必要です。

 見た目がぜいぜいしている時は病気だと分かりやすいのですが、そうでない時にも静かに進んでいるのです。原因は、空気の通り道である気管支に炎症と呼ばれる変化が続くためです。

 例えると、火事のボヤ状態が普段から続いていて、時折火が大きくなったときに発作として顔を出すようなものです。気管支の損傷と修復が繰り返されると、気管支の内側が分厚くなり、空気の通り道が狭くなり、治りにくくなっていくのです。

ご出身は
 喘息の診断は、喘鳴や呼吸の苦しさを繰り返すことで次第にはっきりしていきます。

 アレルギーの検査、発作の時のレントゲン写真や、呼吸機能の検査なども参考にします。年齢が小さいほど検査も難しいため、他の病気がないかどうかを慎重に見ながら、時間経過に沿って診断していくことが多いです。

 小児の喘息はアレルギーが関係していることが多く、特にほこりの中のダニに対するアレルギーは約九割に見られます。室内のほこり(ダニ)を減らすことは予防と治療の両方に有効とされています。タバコの煙も大変良くないことがわかっています。

ご出身は
 小学校に上がるまでは、喘息ではない喘鳴も多いため、症状が軽い場合には確実な診断は難しいことが多いです。

 しかし、喘息だった場合には、発作を繰り返すたびに、さらに発作が起きやすくなるため、治療は早めに始めた方が良いことになります。

 そこで最近では、年間三回以上の喘鳴を認める場合には、喘息の可能性が高いと判断して、早めに治療を始めることになってきています。

 喘息をモグラたたきゲームに例えてみると、発作の時の短期治療は、出てくるモグラを棒で叩いているようなものです。

 しかし、これではモグラは減りません。そして、病気が進行するにしたがって箱の中のモグラは数を増し、さらに症状が出やすくなってしまいます。

 病気を治すには、箱の中のモグラを減らすことが大切です。そのためには、症状のない普段からの治療が重要で、炎症を抑える薬を定期的に使用します。一方、発作の時には気管支拡張薬などの、いわゆる発作止めを使用して、出てきたモグラを叩きます。

 喘息の診断や治療方法の選択には、経過を踏まえた判断が必要です。