胃はさまざまな食べ物を受け入れるというタフな働きをする半面、喜怒哀楽やストレスの影響を受けやすいデリケートな臓器でもあります。胃の粘膜は熱いもの、辛いものなどの食事として入ってくる刺激に対して強い抵抗力を持っていますが、ある程度を超えると炎症を起こして胃炎となります。       

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 胃の働きは口で噛み砕かれた食物を一時的にたくわえて消化し、栄養を吸収しやすい状態に変え小腸に送り出すことです。食物の消化には胃から分泌される胃酸が大きな役割を果たしています。胃酸は非常に強い酸(pH1〜2)で、食物と共に入ってきた細菌や微生物などを殺菌する働きもしています。

 こうした強い酸から自己を守るために胃は粘液を分泌して粘膜全体を覆うことによって消化されないようなバリアー機能を有しています。また胃粘膜は自己修復する力も持っていますが、傷が大きくなりすぎるとその修復力だけでは間に合わなくなり、炎症が進んでしまいます。

 胃炎の初期は胃粘膜の表面がただれて「びらん」を作りますが、さらに進行すると粘液によるバリアーが不十分になり、胃酸が胃壁を消化して「胃潰瘍」になってしまいます。

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 胃酸という強力な消化液があるため、胃は長い間無菌状態と思われていました。しかしマーシャルとウォーレンという二人のオーストラリアの研究者が胃にヘリコバクター・ピロリという細菌が生息することを発見し、2005年にノーベル医学賞を受賞しました。

 マーシャル博士は実際にピロリ菌を飲んで胃炎になることを証明しています。現在では胃炎や胃潰瘍だけでなく、胃がんの発生にも関係している事がわかっています。

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 胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があり、症状が異なります。急性胃炎は暴飲暴食や薬剤、ストレスが原因となることが多くみぞおちの痛みやむかつきなどがみられます。慢性胃炎の多くはピロリ菌の感染と関係していると考えられ、主な症状は胸やけ、胃もたれ、食欲不振などですが、胃潰瘍や胃がんでも同様の症状がみられます。

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 内視鏡による観察で胃粘膜の状態を調べるとともに胃潰瘍や胃がんのないことを確認します。必要により生検(せいけん)といってごくわずかな胃の組織を採取して詳しく調べることもあります。またピロリ菌の有無も確認できます。

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 特に急性胃炎では原因の除去が大切です。ストレスや薬物など原因がはっきりしている場合、それを取り除くだけで治ってしまうこともあります。

 薬物治療では急性、慢性に関わらず胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬、胃の運動改善薬が使われます。

 生活習慣の改善も大切で、過労や暴飲暴食を避けるとともに胃酸の分泌を促すような食事(コーヒー、焼肉、強い香辛料)や喫煙(特に空腹時)は控えましょう。

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 胃酸分泌抑制薬が市販薬にも使われるようになり、誰でも手軽に服用できるようになりました。
 しかし市販薬だけに頼ると重い病気を見逃してしまうことがあるので注意が必要です。胃潰瘍や胃がんなどが隠れている可能性もあり、症状が続く場合には消化器内科で詳しく検査をうけられることをお勧めします。