皆さんの周りにも、「立ち上がりや歩き出しの時に膝が痛む」と言っている中高年の方々がいらっしゃると思います。今回は、そんな方々の膝痛の原因の代表的疾患である「変形性膝関節症」についてお話したいと思います。
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さまざまな原因によって、膝関節にかかる負担に耐えられない軟骨の破壊・変性を基盤に生じる疾患です。原因がはっきりわからないものを一次性、若い頃の外傷や関節リウマチ、骨壊死など原因がわかるものを二次性といっています。一次性の方が多く、男性よりも女性に多く見られるといわれています。また、日本人はO脚の人が多く、膝の内側へ体重がかかりやすくなっています。そこへ、内側の軟骨の破壊・変性が進むとさらにO脚の程度がひどくなるという悪循環を生じます。
症状については、初期は動作の開始時痛などが多く、徐々に長い時間膝痛を感じるようになります。また、次第に膝関節の曲げや伸びの制限が大きくなってきます。経過中に膝関節の袋の内側にある滑膜に炎症を生じて水がたまることもあります。
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大きく二つに分けることができます。保存的治療と手術的治療です。
■保存的治療
@体重を減らしたり、重いものを持たないようにしたり、日常生活の中で膝関節に過度の負担をかけないことが大切です。
A大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)を強化することで、膝関節にかかる負担を軽くすることが期待できます。
B内側から外側へだんだん厚くなっている楔状の足底装具を装着することにより、膝関節にかかる体重を外側へ移す効果が期待できます。
C膝の保温目的のサポーターや膝関節を安定させる目的で両側に支柱のついたサポーターの使用。
D痛み止めの内服やヒアルロン酸製剤の関節内注入などの薬物療法。
■手術的療法
@高位脛骨骨切り術
脛骨(すねの骨)を膝関節の近くで切り、脚をO脚から軽度のX脚へ矯正することにより、膝関節にかかる体重を外側へ移す効果が期待できます。
A人工関節置換術
変性した膝関節面を切除し、金属とポリエチレンでできた人工関節を挿入する手術です。内側だけを置換するものや内外側を置換するものがあります。
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外来で「膝の水を抜くとくせになるから、抜きたくない」とか「手術すると歩けなくなると聞いたからしたくない」と言う患者さんに時々会います。そんなことは、まずありません。手術は、その人の症状や変形の程度によって適応があります。膝の痛みが続いてお困りなら、一度近くの整形外科を受診して相談してみてはいかがでしょうか?
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