今、地域医療は、大変な状況です。新潟県でも一昨年は水原郷病院が話題になり、この春は糸魚川地域の姫川病院が経営不振と医師不足のため、六月末で閉院に追い込まれました。病床数百十四床、一日の外来患者数約二百人の病院が突然なくなるというのは大変なことです。特に姫川病院が循環器を中心とした病院であったため、地域の循環器系の患者さんたちへの影響が懸念されました。

 それでも何とか対応せざるを得ず、まず入院患者さんの当院への転院を行い六月中に終了しました。外来患者さんは、地域の診療所の先生方や上越総合病院はじめ上越地域の循環器の先生方のお世話になり、八月いっぱいでほぼ通院先が決まった状況です。幸い、富山大学の循環器内科から毎週水曜日と営業土曜日に丸一日外来に来てもらえることになり、何とか一息つけました。

 これまでもいっぱいであった外来患者さんが、姫川病院の閉院によりさらに増加したため、外来で診察を待つ時間は増え、朝来院した患者さんが午後の三時過ぎに診察ということもありました。さらに、一時救急・二次救急ともに当院に集中し、救急診察での負担増が診療スタッフの疲労を招いています。診療所の先生方に一時救急を手伝っていただき、さらに大学からも支援してもらっています。
ご出身は
 この状況の中で、今後の展開を開くためには、循環器系の医師確保と循環器の診療体制の整備が必須です。行政にもお願いし、来年の四月に向けての施設・機器の設備のために努力を重ねてまいりました。

 このたび、当院に循環器棟を増設しそこに心臓カテーテル検査用のシネアンギオ装置およびRI検査のための、SPECT・CT装置などを設置すること、また治療後の患者を病棟で診るための集中治療室の設置も決まりました。幸い、胸部血管外科の医師は姫川病院から当院に移ってもらうことができ、富山大学からも非常勤の心臓外科・呼吸器外科の支援を受けており、来年の四月からは内科と外科を合わせた万全の体制で稼働することができます。

 すなわち、循環器疾患で不安定狭心症や心筋梗塞の患者さんに対して心臓カテーテル検査を行い、内科的治療(経皮的冠動脈インターベンションなど)か外科的治療(冠動脈バイパス術など)かを選択することが可能となります。

 今回の施設設備の整備にあたっては、行政から三分の二の支援をいただくことができ大変ありがたく思うとともに、責任の重大さに改めて身の引き締まる思いです。

 糸魚川地域の急性期医療を守るために、今回の決定は大変に意義の大きいものであり、これによって地域の急性医療をしばらくの間続けていける体制が創られたものと考えます。

 糸魚川総合病院  院長 樋口 清博