昨春より、妙高市内で時折、車椅子の犬を見かけるようになりました。見ているとなんの不自由もなく、他の犬達と同じようにとても楽しそうです=写真。

 この犬の名前は“はじめくん”13才。オスの秋田犬の雑種。飼い主は、けいなん総合病院の外科医師・松岡先生。アパート生活では犬を飼えず、結婚後もしばらく富山の実家に預けていました。

 平成15年7月のある日、はじめくんは、鍵のかけていない戸を自分で開けて屋上に上がっていき、その時、下にいた別の犬を見つけて勢いよく走ってしまい転落。脊椎損傷で動けなくなりました。当時、糸魚川に赴任していた夫妻は、連絡を受け大急ぎで実家に戻りました。それから富山への獣医さん通いがはじまったのです。神経の麻痺が起きているため、管で尿を出して貰ったり、膀胱炎になって抗生剤を飲ませたり…。無理に押さえつけると、とても嫌がり大変でした。

 長野に転勤した際、そこの獣医さんから管を使わないで尿を出す方法を習いました。膀胱部を三時間毎に圧迫することで排尿を、肛門部を刺激することで排便が出来るようになりました。

 けがをして一年。松岡先生は、はじめくんの為に車椅子を注文しました。幅と長さがオーダーメイド。調整のため作製元のある東京まで何回か通いました。やがて完成。念願の散歩が出来ることになったのです。雨の日も雪の日も、毎日、一時間程出かけます。電柱や街路樹で一休み?しながらのお散歩です。

 お風呂は、奥さんが入れています。前足を立たせ下半身を膝に乗せ洗うのです。はじめくんの大きな体は支えるだけでかなりの重労働になります。しかも、健常犬と違い、すべてに時間がかかりますが、本当の子供のように見守るのです。

 散歩をしていると「頑張ってるね。偉いねえ」と言ってくださる方もいれば、「こんな状態で生きて可哀想だね」と言われる方もいます。けれども、車椅子を使いながらも、一歩一歩大地を踏みしめて歩く姿は、人間と同じに、命ある喜びが伝わります。「この車椅子はボクの足。今はとっても幸せだよ」。はじめくんは、生きる勇気を教えてくれているようです。
(取材/小島)