病院は、そこで働く職員の力だけで成り立っている訳ではない。地域の皆様からの支援や一般ボランティアの方に支えられ、その役割を果たしている。継続的な医療ボランティアは難しいと言われる中、長岡中央綜合病院では、たくさんのボランティアの方が、生きがいを持って活動している。病院を陰で支えるボランティアさんを追跡取材。 |
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病院の西口玄関にて、ピンクのエプロンをしたボランティア三年目の小川さんを発見。そこに「耳鼻科外来はどこのブロックですか」と訪ねる女性。「どうぞ、ご案内します」と患者さんの歩調に合わせ一歩前へ軽快に歩き出す。患者さんを案内した帰り道、小川さんに手を挙げ、嬉しそうに挨拶をする患者さんを見掛けた。きっといつもお世話している方なのだろう。玄関に戻ると、車を降りて一人ウロウロしているお年寄りに近寄り、すかさず手をさしだす。「今日はどうされましたか。受診ですか」とやさしい言葉を掛け、自動再来受付機まで案内した。患者さんで溢れる外来において、ベテランボランティアの小川さんは、最高の水先案内人である。
翌日、案内係を中心としたボランティアの方々が集まる食事会にお邪魔した。メンバー16人の内、9名が病院からの呼びかけにより、お昼ご飯と笑い声の絶えない会話を楽しんでいた。 |
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「どうして皆さんは、このボランティアを始めようと思われたのですか」と問いかけてみた。「富所副院長に誘われて…あの先生強引だからね」と嬉しそうに話す方。「息子が看護師を目指しているので私も刺激されて」と語るお母さん。「主人が入院中お世話になったのでその恩返しのつもりで…。でもね、違うんですよ。私たちがボランティアをしてるようで、実際は私たちがボランティアされてるの。この活動を通して元気をたくさん頂いているんですから」と第三の人生の楽しみを語る方もいた。
「やっぱり病院が混んでると嬉しいね」と小川さんは語る。他のボランティアさんもそれに頷き、病院の改善点について話が盛り上がる。病院側の担当者も、貴重な意見として熱心に耳を傾けていた。 |
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旧病院から継続し、十年を迎えるという院内図書館「さくら文庫」を覗いた。入院されている患者さんに少しでも潤いを与えたいと、移動図書館から始め、現在は二階エレベーターホール脇に立派な一室を構えている。本を選んでいる患者さんに声を掛けてみた。「助かりますよー、入院が長くなりそうなので、本当にありがたいです」としみじみ語ってくれた。館長の八幡先生にもお話を聞いた。「現在25名のボランティアの方が登録あり、交代で貸し出し活動を行っています。今は、火・水・木の開館ですが、もっとボランティアを集め、毎日オープンさせたいと考えています。興味のある方は、是非一度さくら文庫に足を運んで下さい」と夢を膨らませていた。 |
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小児科病棟で毎週水曜日、絵本の読み聞かせボランティアをされている星野俊子さんを訪ね、実際の読み聞かせに同行した。病気を抱えた子供たちに接することは難しい。子供たち一人ひとりのこころの動きに合わせ、優しく語りかけいく星野さん。無理に絵本を勧めることもない。子供の興味が絵本に向いた時だけ読み聞かせを行う。
「子供たちの入院生活が、変化のある楽しいひと時となるように、また、絵本を通して心豊かになってほしいと願い、ボランティアをさせて頂いています」と幸せそうに語る。
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ボランティアの長続きの秘訣はなんだろう?と考えてみた。病院は、自主性を尊重しボランティアをお願いしている。そして、ボランティアの方も自分のできるもの、あるいは得意なものを生かして楽しく活動しているからであろう。
病院は、地域に開けた健康を語る憩いの場であり、その架け橋となるのがボランティアの皆さんの笑顔に違いない。
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(取材/大橋利弘) |
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