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患者さんの状態によっては、口からの栄養補給が不可能となってしまう方もいます。やむなく、液状の栄養剤をチューブを通し、直接胃や腸に届ける方法をとることもあります。場合によっては、輸液によって栄養を補うことも、一日も早い回復には欠くことのできない治療方法の一つとなるのです。
口から栄養をとることが可能な患者さんでも、うまく飲み込めずに苦労される方もいます。そういった患者さんには、言語聴覚士による嚥下訓練が行われます。
誤嚥性肺炎を引き起こし、入院してきたTさん。入院後しばらくは食事を止めて、輸液による栄養補給を行っていました。症状もよくなり、食事を再開。食事の様子を言語聴覚士と看護師が見守ります。
「上手にゴックンできてますね。少し喉のとおりがよくないために飲み込んでしばらくしてから『むせ』がみられるようですけど、喉の通りのよい食事をすることで、誤嚥は回避できそうですね」。
食事を取れるようになればTさんの退院は近付きます。「良かったね」Tさんの背中を優しく看護師はさすります。 |
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もちろん、口から栄養をとることが一番の理想です。患者さん一人一人の抱えている疾患などの問題点と照らし合わせて、最適な栄養摂取方法を提案することもNSTの役割の一つです。
身体計測のデータや検査値、現在摂取している栄養量、リハビリなどの運動量、患者さんが今抱えている疾患。NSTメンバー全員が一人の患者さんに対し専門的な知識を持って回診後のミーティングに臨みます。
早期退院や社会復帰といった「個々のゴール」を目指し、患者さんと共に歩むのがNSTの役割の一つといえます。ミーティングではNSTメンバーがそれぞれの立場に立った見解を述べ合うため、白熱した議論になることもあります。 |
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「各々の専門的な知識や経験が役立つのはもちろんのこと。皆の知識や経験を取り入れることで、より大きな一歩を踏み出せる。さらにそれを、患者さんに直接活かすことができる」。NSTのような「チーム医療」の大きな利点といえます。
病院内にとどめている活動を、地域の医療機関との連携を行うことで、地域医療に根ざした活動も行うことができます。認知度を高めることで、連携もスムーズに行えるはずです。様々な場面がNSTの可能性を秘めているように思います。 |
(記事/山岸) |
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