ご出身は
 眼の一番奥、眼底には網膜という神経の膜があり、多くの毛細血管があります。糖尿病の場合、網膜血液の流れが悪くなり、網膜に慢性的に酸素や栄養素が不足します。これが糖尿病網膜症の原因になります。
 日本国内で失明を含めた視覚障害の原因として最も多いのが糖尿病網膜症です
ご出身は
 網膜の状態から進行の階段が三つに分けられます。
 T.単純網膜症
 網膜内の血流が悪くなり始めた最初の段階です。血管の一部がこぶのように腫れる毛細血管瘤、網膜の点状・斑状出血が認められます。
 U.前増殖網膜症
 血管が完全に詰まって、網膜の一部に血液が流れていない虚血部分が生じてきた状態です。放置すると虚血部が広がり、Vの増殖網膜症へと進行します。
 治療…血糖コントロールと虚血部分のレーザー光凝固術。
 V.増殖網膜症
 虚血部分に酸素や栄養をなんとか送り込もうと新生血管が伸びてくる末期段階です。新生血管は大変もろく出血しやすい血管で、これが破れて網膜の表面や眼球内に出血すると、著明な視力低下が起ります。網膜剥離を合併することもあります。
 治療…網膜全体にレーザー光凝固、硝子体手術。
ご出身は
 レーザー光凝固術は、網膜にレーザーを照射して新生血管の発生を防ぐ方法です。この治療で視力が回復するわけではありませんが、網膜症の進行を阻止できるといわれています。外来通院で施行可能です。点眼麻酔をして一回15分〜30分程度の時間がかかります。進行の段階により、数回に分ける場合があります。
 硝子体手術は、眼球内の圧力を灌流液で保ちながら、特殊な手術器具を眼球内に入れて、出血を除去したり、剥がれた網膜を元に戻したりします。数週間の入院が必要になります。
ご出身は
 いずれの治療も極端に落ちてしまった視力を元に戻すことはできません。
 糖尿病といわれたら、必ず眼科で検査を受け、定期的に受診してください。糖尿病網膜症は、かなり進行しても自覚症状がほとんどないため、ある日突然眼が見えなくなり、あわてて病院に駆け込み、硝子体出血や網膜剥離と診断されることもあります。
 しかし、検査、治療を定期的に続けていれば、糖尿病で失明することは必ず防ぐことができます。