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三大疾病の中でもがんによる死亡は最も多く、もう二十年以上も死因のトップとなっています。厚生労働省はこの事実をふまえ、がん患者の治癒率(五年生存率)改善を目的とした計画を立てました。それを受けて、地域の医療機関と連携を図り、継続的に質の高いがん治療を提供するために設置されたのが「がん拠点病院」です。
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正式には「地域がん診療連携拠点病院」といい、がん診療情報の収集や分析、情報発信、最新の治療方法に関する研究会の開催など、がん診療の水準を医療機関相互の連携において高めようというのが大きな目的です。
がん拠点病院の指定を受けるには様々な条件があります。がんについて専門的な医療体制を有し、患者さんや地域の医療機関からの診療に関する相談に応じることはもちろん、身体的な治療だけではなく、患者さんの心のケアを目的とした「緩和ケア」の体制も整っていなければなりません。緩和ケアというと末期がんの患者さんが受けるものというイメージがあるかもしれませんが、早期からがん治療における痛みや心理的ストレスを和らげるために行われるもので、今ではなくてはならない大事な治療です。
また、情報提供においても、がん患者の五年生存率などの情報を集めて全国的協議会に報告したり、院内のがん登録体制を整備する必要があります。院内がん登録とは、病院を訪れた全てのがん患者さんについて情報を整理保管し、集計解析する仕組みのことです。これにより、何人の患者さんが、どのような病態で、どのような治療を受けたかを知ることができ、地域のがん治療に還元できるようになります。
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がんと一口に言ってもその種類は様々です。同様に、がん治療も、手術、抗がん剤治療、放射線治療と様々ですが、がんの種類や発生部位によってそれぞれ得意不得意があります。そのため、単独での治療は限界があり、これら複数の方法を組み合わせて行うのががん治療の世界では一般的です。
その中でも、今回はがん治療の最先端を行く長岡中央綜合病院の放射線治療をご紹介しましょう。
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放射線治療には、がん細胞だけに放射線の効果を集中させる様々な工夫がされています。昨年の移転新築を機に導入された最新の治療機器では、今までに比べて放射線の強度が安定し、身体の表面から深部のがんに至るまで非常に精度の高い治療が可能となりました。
また、がん組織を中心に放射線ビームを回転させながら照射するこの機器は、がん組織の形状を忠実に再現し、確実にがん細胞のみを狙い撃ちできる仕組みになっています。この技術により、正常な細胞に無駄な放射線を照射することもなくなりました。
放射線治療は、臓器を切らずに治すというのが最大の特徴です。今後、がん治療の選択肢として需要も増えていくことでしょう。高齢化が進む日本において、体に負担がかからないのも利点のひとつです。
がん拠点病院には、放射線治療医や専任の技師も配置されています。専門性を生かし、治療の精度を高め、放射線の安全性を確保することで放射線治療に対する安心を常に提供しています。
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今回、長岡中央綜合病院の「がん拠点」指定にあたり、副院長の富所先生に話を聞くことができました。「病院にはそれぞれ理念や特徴がありますが、当院は今回の指定を受けるずっと以前からがん診療という分野に力を入れてきました。数年前から治療成績をはじめとするがん治療のデータをインターネット等で公開していましたし、昨年の移転を機に新しい放射線治療機器も整備できました。やっと名実共にがん治療の病院になることができました。そもそもがん治療とは、がんにならないための予防から始まります。そして、検診での早期発見、患者さんひとりひとりと向き合った適切な治療から緩和ケアに至るまで、当院の役割は大きいと思います。中越地区におけるがん診療のセンター病院として、今まで以上に安心を提供できる病院を目指していきたいですね。
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(記事/大橋・韮澤) |
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