胃がんや大腸がん検診、そして乳がん検診…、どんな「がん」であっても早い時期に発見すれば完全に治療できる近年の医療です。しかし、例えば胃がん検診では、バリウムを飲めば必ず早期のものが見つかるというわけではありません。芽生えたばかりのがんであればあるほど胃袋のシワにかくれたり、バリウムの付きにくい壁にひそんでいたりします。
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全国の統計を見ますと、約千人胃がん検診を受けると一人の割合でがんは発見されます。しかし、千人中二人くらいまでの胃がんを見つける事も可能です。そのためには本当に小さな胃がんでも見逃さない検診を行う側の努力が必要です。これを私たちは「検診の精度を高める」と言います。
千人中二人のがんを発見する簡単な方法があります。詳しい検査が必要ですと言う要精検者をやみくもに増やすのです。胃袋のヒダや壁が普通と少し違うと感じたら、精密検査を受けてもらう…確かにがんは多く発見できるでしょう。ただ、これは間違った検診、検診の精度を高めている訳ではないのです。全国の統計を見ますと、胃がん検診を百人受けると精密検査が必要とされるのは約九人です。正直、これでは検診の精度が高いとは言えないと思います。長年の経験から百人中三人程度の要精検者が妥当だと考えます。そしてその要精検者十五人の精密検査から一人の早期胃がんを見つけられれば、少しハードルは高いかもしれませんが、その検診精度はかなり高いと言えます。精密検査にまわる方を少なく抑え、多くのがんを効率よく発見することこそ正しい検診と言えます。胃袋のヒダや壁が普通と少し違うと感じたら、それが早期の胃がんによるものなのか判断する撮影技師であり、診断医師でなければなりません。
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乳がんを発見するレントゲン検査・マンモグラフィーにおいて、認定された専門技師が撮影を行う施設が増えている事は広く社会的に知られています。胃がん検診においても認定の制度が導入され、新潟県厚生連病院全体で八名の専門技師が誕生しています。検診の精度を上げるために、撮影技師の教育、撮影機器の保守点検等を怠ることなく受検者の皆様に安心を提供しています。
長岡中央綜合病院では、今年四月よりデジタル検診車が導入されました。撮影している最中に病気の鑑別が容易になりましたし、病気を判定する医師にとっても同様です。
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さて、「正しい検診」で一番重要なことは何でしょう。検診はあくまでも病気を発見するきっかけでしかありません。「医療機関への受診が必要」とされても自覚症状がないからといって、そのまま放置する方があまりにも多いのです。全国の統計を見ますと胃がん検診にて要精検となっても、三人に一人は病院を受診されていません。とても驚くべき現実です。また、「異常なし」の結果であっても、毎年継続して検診を受けることが早期のがんを見つける重要なポイントです。進行胃がんが見つかる場合、翌年の検診を受けていない事が大半です。不定期な検診、そして検診を受けた後の受検者の対応によって「間違った検診」になりうるのです。
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長岡中央綜合病院 放射線技師 大橋 利弘 |
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