NSTとは
 脳の血管が閉塞し、脳の神経細胞に酸素と栄養が供給されなくなるため、脳の神経細胞が死滅し、麻痺などの症状を生じる病気です。患者さんの数が多く、また死亡率は心筋梗塞の二倍もあり、単一臓器の致死的疾患としてはわが国bPの疾患です。

NSTとは
 最悪の場合、脳ヘルニアによる心肺停止や、合併する誤嚥性肺炎、肺塞栓症により死亡します。一命をとりとめた患者さんの場合も、多くの場合は片麻痺などの後遺症を残します。昨今マスコミ報道で「最新治療」と宣伝されている「急性期血栓溶解療法」も、実際に適応になる患者さんは全体の約3%しかなく、その適応になった患者さんの社会復帰率を11%増加させるに過ぎません。実際、田中角栄元総理大臣は重度の言語障害、右片麻痺を残し政界復帰不能となり、小渕恵三総理大臣は意識障害から回復しないまま発症一カ月でお亡くなりになりました。

NSTとは
 このように脳梗塞はひとたび発症してしまえば、そこで人生の大きな変更を余儀なくされる病気です。そのためなによりも予防が重要です。脳梗塞の危険因子としては、以下のものがあるので、その治療・管理が大切です。

◆高血圧…血圧が高いほど脳卒中(脳梗塞と脳出血)の発症率は高くなります。したがって高血圧の治療は脳卒中の予防にきわめて有効です。三年から五年間のわずか5−6mmHgの拡張期血圧(下の血圧)の下降により脳卒中発症率は42%も減少します。診療ガイドラインでは至適降圧レベルとして、収縮期血圧(上の血圧)140mmHg、拡張期血圧90mmHg未満が推奨されています。

◆糖尿病…糖尿病を有する患者さんの脳梗塞発症率は、糖尿病を持たない患者さんの一・5倍から3倍とあります。当然血糖コントロールが重要です。

◆心房細動…心房細動を有する人の脳梗塞発症率は年平均5%で、心房細動を持たない人の2倍から7倍高くなります。ワーファリンという薬の内服が推奨されています。
◆喫煙…喫煙本数が20本以下/日の場合は、タバコを全く吸わない人の1.6倍、21本以上/日の場合は、タバコを全く吸わない人の2.3倍の脳梗塞を発症します。禁煙して2年から4年経過すると禁煙の効果が現われ、脳梗塞の発症率が低下します。しかしタバコを全く吸わなかった人と同じ危険度になるまで10年から14年の完全禁煙が必要です。

◆飲酒…少量飲酒者では機会飲酒者に比べ、脳梗塞の発症率がむしろ低いことが報告されています。しかしながら、@多量の飲酒(一日1.5合以上)では脳梗塞の発症率が増加することが判明していること、A脳出血の発症頻度は飲酒量に比例して増大すること、から一日1.5合以上の飲酒は避けたほうが良いでしょう。
NSTとは
 血圧・血糖の管理、心房細動があれば治療、禁煙、小酒。