近年、保育園や幼稚園の園児たちと触れ合えるデイサービスが、テレビで紹介され注目されている。
 お年寄りと小さな子供たちとの素朴な交流は、心の奥底から、人としての当たり前の美しさを、なんなく引き出してくれるようだ。

 栃尾地域にも、そんなデイサービスセンターがある。
 緑の田畑に囲まれた、みどりの保育園の敷地内の『みどりデイサービスセンター』。
 午前十時、利用者のお年寄りは、体調の良い方から順々とお風呂に。保育園の
子供たちが来るまで、お風呂を待っているお年寄りの方々にインタビューした。
 九十歳のTさんは、二年前まで和裁の仕立てをしていた。手が器用なので、壁の飾り作りに欠かせないメンバーだ。
 “平家落人の末裔”というKさんは、自宅に三〇〇年遡る系図を持っているという。
 Yさんは、内孫がこの保育園に通っていると、誇らしく教えてくれた。
 脚が萎えて立てないMさんは、大きなガラス窓から見える山際の畑をさして、「オレの畑に連れて行ってくれ」と懇願される。掴まれた私の腕が痛い。
 しばらくして、子供たちがやって来た。お年寄りたちの間に分け入っていく。お年寄りの目が、表情が、動きが、どんどん変わっていく。たくさんの子供たちが、あちこちで笑顔の花を開かせていく。
 今日の利用者さんは、十七名。多い日は二十五名にもなる。立つことも出来ない利用者も多くなっているという。入浴前後の水分補給。上手に呑み込むことができないので技術と間合いを掛けて根気よく全身状態を看ながら行われている。
心がふれあう楽しい時間
 施設長の松平直子さんにお話を伺った。
 「利用者さんは、いろいろな背景を持っています。十人十色。認知症の症状の方もたくさん居られます。エプロンを持参して、茶碗洗いをしに働きに来てくれる利用者さんもいます」。
 「利用者さんは、孫・ひ孫の年代の園児たちと目線が合うと、とても穏やかになります。ご家族がたまたま来られて、『こんないい顔を家で見たことがない。うれしいです』と言われることもあります」。
 本当に、人間の素直な温かい生命が溢れるひと時だ。

心がふれあう楽しい時間
 みどりデイサービスセンターが保育園に併設されたのは、介護保険制度が始まる二年前の平成十年。入浴設備やフロアの間取りなど見学すると、先進的なビジョンを描き、情熱を賭けて、在りのままを目指して設立されたことを感じる。
 問い合わせや視察もあったとのこと。こうしてデイサービスへの幼児訪問は各
地に広がってきている。
 そしてこれは、幼児のみならず、学童のボランティアへと広がり生きた学習になっている。昨今、ともに生きる平和な社会をつくる上で、あたり前にして大事なことがここに在る。
(取材/佐野)